【中上級者向け】ES書き方解説:具体化法で差をつけよう
§1.はじめに
こんにちは。就職活動(新卒就活)では、多くの企業でエントリーシート(ES)の提出が求められます。ESとは履歴書に近いものですが、「手軽に書けるから」と侮れない重要な存在です。最近ではWeb上での提出が主流になったことから、書類選考の段階で一気に応募者を絞る企業も増えているのが実情です。書類選考で不採用になると、その企業へ再挑戦する機会は極めて限られてしまいます。さらに、その後の面接は基本的にESの内容に沿って進められることが多いです。
つまり、このESこそが就活の最重要ポイントの一つといっても過言ではありません。特にインターン選考の時期は、ほぼESのみで合否が決まることもあり、本腰を入れて取り組む必要があります。
本記事では、ESの習熟度を初心者→中級者→上級者と段階的に区分し、それぞれのステップで何を目指すべきかを解説していきます。PREP法などの基本から学び、本選考が始まる頃には上級者レベルの仕上がりを目指していきましょう。
本記事では、前回からの続きで、中上級者向けにまとめました。
§2.中級者の心構え
[到達ポイント]
- 各段落の意味づけをしっかりと押さえること
- 文章を情報の塊(かたまり)にして、不要なエピソードや表現を省くこと
[解説]
エントリーシートは自分をPRする文章です。したがって、単に論理構造を整えるだけでは足りません。「どの段落で何を強調したいのか」を明確にしておく必要があります。
ここで意識していただきたいのが情報の質です。ESは数百字という限られた文字数で自分を表現する、高難度のビジネス文章といえます。あれもこれも書こうとするとすぐ文字数オーバーになるため、情報の取捨選択が必須です。
- 書きたいことをすべて書く
- そこから冗長な部分を削る
この流れで推敲すると、余分な言葉が省かれ、読みやすいESに仕上がります。PREP法と組み合わせて、この推敲プロセスを習慣化しましょう。
ESで本質的にPRすべきポイント
「人柄」「行動特性」「思考力」「リーダーシップ」…ESに盛り込みたいキーワードはたくさんありますが、新卒採用で重視されるのは、「この人はこの場面でどう考え、どう行動するのか?」という点です。
なぜなら、新卒採用はポテンシャル(将来性)で見られるため、どんな成果を出したかよりも、それをどう導いたのか(再現性)が問われます。ですから、大きな成功体験がない場合でも問題ありません。むしろ、嘘や誇張をして「成果を盛る」必要はないのです。思考・行動のプロセスをしっかり書くほうが、企業側に「この人はうちで活躍しそうか」をイメージしてもらえます。
具体的なテクニック:『具体化法』
ここでは、「思考・行動プロセスを端的に示す」ために有効な手段として、私が仮称で“具体化法”と呼んでいる方法を紹介します。
- 目的 → 目標 → 戦略 → 戦術
という4つの段階に分解するやり方です。このステップを踏むと、文章がストーリー性を帯び、読み手にも人柄や行動特性が伝わりやすくなります。
- 目的:最上位の抽象度。全体として何を成し遂げたいのか?
- 目標:目的達成のため、もう少し短期・具体的な到達点を設定する。
- 戦略:目標をクリアするための全体方針。どのような方法を選び、なぜ選んだのか?
- 戦術:戦略を実行するための具体的な行動や工夫。数日単位の細かいプロセスまで落とせると、オリジナリティや再現性が鮮明になる。
たとえば先ほどの「演劇部の新入生勧誘」のES例を、この4段階に落とし込むと以下のようになります。
- 目的:演劇部の部員不足を解消する
- 目標:新入生がアクセスしやすい情報発信(部の雰囲気を可視化)を強化する
- 戦略:部の公式サイトを立ち上げ、動画やSNSと連携させて認知度を高める
- 戦術:写真を多用して雰囲気を伝える、イベント情報を一括掲載する特設ページを作る …など
ここに「なぜそう考えたのか」という動機を紐づけるだけで、論理的な物語が自然と生まれます。「自分が新入生の頃、情報が見つけにくく不安だった」という体験がモチベーションになった、などと付加すれば、人柄や行動特性がさらに伝わるでしょう。
▼別のエピソード例:演劇舞台への挑戦
Q.あなたが学生時代に最も頑張ったことは?
学部時代を通じて、演劇部の演目の一つである「演劇舞台」に取り組んできました。先輩が全身を使い、ダイナミックに主役を演じている姿に憧れ、自分も主演担当になることを目標に入部しました。しかし、主演は経験豊富な人が任される重責ポジション。私は大学からの新規入部でまったくの初心者だったため、想像以上の壁を感じました。さらに、専門授業や実験で忙殺され、練習時間を確保するのが困難でした。それでも、一度決めた目標を途中で投げ出したくないと思い、「毎日1時間は必ず練習する」ことを自分に課し、経験者にも積極的にアドバイスを求めました。そうした継続的な取り組みが実を結び、最終的には部長と並んで大きな舞台で主演を担い、熱い拍手をいただきました。この粘り強い向上心を活かし、就職後は研究開発やプロジェクトに取り組んでいきたいと考えています。
これを「具体化法」に当てはめると:
- 目的:部の舞台で主演を任される
- 目標:経験者と肩を並べるレベルまで腕を上げる
- 戦略:絶対に途中で諦めず、地道に稽古を積み重ねる
- 戦術:忙しくても毎日1時間は部室で個人練習、先輩への積極的な相談
- 動機:「初心者だからこそ挑戦し、上達の喜びを糧にしたい」
このように段階を整理すれば、文章にストーリー性と一貫性が生まれ、人柄や行動スタンスを説明しやすくなります。
プロセスを言語化するコツ
具体化法に限らず、「なぜその選択をしたのか」を盛り込むことが大切です。下記は、私が友人にアドバイスした際の抜粋です。
・背景説明 → 課題や壁 → 選択した解決方法(ここが重要!) → 結果 → 学び → 今後どう活かす?
大切なのは、課題に対してどんな解決法を選んだかです。そこにあなたの思考回路や性格、行動特性が明確に出ます。どんなに大きい成果を誇っても、その過程(How, Why)が説得力を欠けば、ESは浅く見えてしまいます。
§3.中級者から上級者へのステップアップ
ここまでは「初心者~中級者」を対象に、PREP法や具体化法を使った基本的なESの書き方をお話ししました。ここからは「転」のパートとして、中級者がさらに上級者を目指すうえで意識すべきことを補足いたします。
1.文章の温度感を上げる
論理構成がしっかりしているだけでは、ESが淡白になりがちです。面接官や採用担当者に、「この人と話してみたい」「この人の行動原理をもっと深く知りたい」と思わせるためには、自分の思い・情熱を適度に盛り込むことが欠かせません。過度な感情表現は逆効果ですが、淡々とした報告だけでなく、「なぜそこまでこだわったのか」という熱意を1~2行差し込むと、読み手の印象に残りやすくなります。
2.企業との接点を意識する
エントリーシートは「自分の魅力を一方的にアピール」するだけでなく、企業の求める人物像とどう噛み合うかを示す場でもあります。上級者レベルになると、ガクチカや研究内容にも応募企業の事業内容や価値観を絡めた書き方を自然と取り入れます。
- 例:舞台の経験 → 「企画運営の視点を活かし、貴社の新規プロジェクトでも主体的に動きたい」など
「自分語り」で終わらないよう、企業にとっての具体的メリットを示すのが上級者のESと言えるでしょう。
3.文字数制限を逆手に取る
ESにはたいてい文字数制限があります。上級者は、その制限枠を意識しながら、シンプルかつ鋭い言葉で要点を伝えます。無駄を省き、必要な情報を端的にまとめるスキルは、社会人に求められる文書作成力にも通じます。
§4.結論:自分らしさを伝えるストーリーを描こう
最後に、これまでの話を踏まえて結論をまとめます。
- 初心者段階では、PREP法に代表される基本的なビジネス文章の型をマスターしましょう。結論ファーストを徹底するだけで、読みやすさは大きく向上します。
- 中級者段階では、文章の塊ごとに「なぜ?」を意識しながら、具体化法(目的→目標→戦略→戦術)を用いてストーリーを構築しましょう。課題に対してどんな手段を選択し、どう考動したのかを示すことで、人柄や行動特性がしっかりアピールできます。
- 上級者段階では、論理構成に加えて、温度感(やる気・思い)や企業との接点を適切に盛り込み、「自分がその企業でこそ活躍できる理由」を明確化していきます。
エントリーシートは、企業と自分を繋ぐ最初の接点です。論理性と情熱を両立させながら、限られた文字数で自分という人材の魅力を最大限アピールする必要があります。焦らず試行錯誤を重ねることで、必ず完成度は上がります。
就活はインターン選考から本選考にかけて、何度もESを書く機会があると思います。毎回PDCAを回し、今回ご紹介したPREP法や具体化法を土台に、どんどんブラッシュアップしてみてください。面接やグループディスカッションでも「自分の考えをどう伝えるか」というポイントは同じですので、ES作成の中で養われたスキルはそのまま活かされます。
あなたのESが少しでも磨かれ、志望企業とのご縁が繋がりますように。
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